バイクレースでの名車

レース

今はMotoGPと呼ばれていますが、かつてGP500と呼ばれていた時代がありました。約30年前、ホンダのフレディースペンサーと、ヤマハのケニーロバーツのレースでの熾烈な争いはバイクロードレースの伝説となっています。特に1983年のGP500は全12戦中、この2人のどちらかが優勝したのです。圧倒的に、この2人のレーサーが飛びぬけていました。

ホンダのNS500を操るフレディーに対して、ヤマハのYZR500に乗るケニー。ピークパワーはおそらく同じくらいでしょうが、決定的に違っていたのが前輪の径です。ホンダNSRが16インチの小径であるのに対し、ヤマハYZRは18インチ。後輪はどちらも同じ18インチでしたから両者のバイクは見た目からして違っていて、またライディングスタイルも全く異なっていました。

フレディーが後輪を意図的にスライドさせてコーナーを立ち上がって行くのに対して、ケニーはしっかりと路面をグリップさせてコーナーを立ち上がっていくのです。どちらも速くコーナーを抜けるためにそうしたテクニックを使っていて両者のライディングスタイルの違いからそのようになるわけですが、やはりバイクの持っている操縦特性からそのようになるのです。

前輪の直径が2インチ違うだけで、コーナリングスタイルがこうも変わるものかと当時興味を持って見守ったバイクファンは多かったでしょう。それは市販車にも反映され、ホンダのVT250とヤマハRZ250は売れに売れました。ホンダファンあるいはフレディーファンはこの名車VTで、ヤマハやケニーファンは名車RZを手に入れ、峠でレーサーまがいにハングオンして攻めたりしていました。